人見知りは、行動できない性格なのか
人見知りの人は、何かを始めるときに慎重になりやすいのではないかと思います。
初めて会う人がいる場所で、いきなり自分から話しかける。まだよく分からない状況で、先に動いてみる。そういう行動には、少なからず勇気が必要です。失敗したくないという気持ちがあれば、なおさら行動の前に考える時間が長くなります。
僕自身、人見知りの人にとって、慎重であることは必ずしも欠点ではないと思っています。むしろ、考えてから動くからこそ見えるものがあります。相手の表情や場の空気、言葉の選び方。すぐに会話へ入っていかない分、周りを見ている時間がある。
『幸運を引き寄せる行動心理学入門』を題材に話した動画では、思っているだけでは現実は変わらず、行動があって結果が出てくるという話をしました。どんな行動を選ぶかによって、未来は変わっていく。だからこそ、人見知りだから動けないと決めつけるのではなく、自分に合う行動の仕方を考えることが大切なのだと思います。
人見知りだからこそ育てたい「社会的感受性」
その本の中で紹介されていた内容に、グループの成績と「社会的感受性」に関する研究があります。
18歳から60歳までの男女700名を数名ずつのグループに分け、いくつかの課題に取り組んでもらう。そして、課題の成績と、あらかじめ調査されていた知能検査の結果を照らし合わせる。すると、リーダーやメンバー個人の知能が高いグループが、必ずしも全体として良い成績を得るわけではありませんでした。
そこで関係していたのが、社会的感受性の高さです。
社会的感受性とは、相手が今どのような気持ちでいるのか、何を思っているのかを察する力のことです。言葉としてはっきり伝えられていなくても、「今、この人はこう感じているのではないか」と受け取る力。そして、そのような人がグループの中に多いほど、グループとして良い結果につながっていたという内容でした。
ここで大切なのは、「女性がいたほうがグループはうまくいく」という単純な話ではないということです。動画の中でも、女性だけでなく、男性の中にも人の気持ちを察して、グループをうまくまとめる人がいると話しました。性別によって決まるものではなく、社会的感受性を持つ人がグループの中にいることが関係しているのだと思います。
一人ひとりの能力が高いこと。知識が多いこと。リーダーが優秀であること。それらはもちろん大切です。ただ、それだけでグループ全体がうまくいくとは限らない。相手の気持ちを察し、調和をつくり、コミュニケーションを整える力も、同じように重要なのです。
「話す力」だけがコミュニケーションではない
人見知りという言葉からは、会話が苦手であることや、人と関わることに消極的であることを思い浮かべるかもしれません。
けれど、コミュニケーションには、たくさん話すことだけが含まれるわけではありません。相手の話を聞くことも、その人が何を感じているのかを考えることも、周りの状況を見ることも、コミュニケーションの一部です。
人見知りの人は、すぐに輪の中心へ入ることはできないかもしれません。その代わり、誰が話しやすそうにしているのか、誰が少し困っていそうなのか、場の中でどんな空気が流れているのかを感じ取っていることがあります。
もちろん、自分が察したことがいつも正しいとは限りません。相手の気持ちを決めつける必要もありません。ただ、「自分は人の気持ちを考えすぎてしまう」と感じていた力を、見方を変えて捉え直すことはできるのではないでしょうか。
その力を、ただ不安になるためだけに使うのではなく、次の行動を選ぶために使う。今は話しかけないほうがよいのか、相手の話を聞くほうがよいのか、場を少し和らげる言葉をかけられるのか。そうやって、自分が感じ取ったものを小さな行動につなげていくのです。
慎重さを、実験するための力にする
人見知りの人は、失敗したくないという気持ちから、行動を慎重に考えがちです。だからこそ、いきなり大きく変わろうとするのではなく、知識を得て、それを実験するような形で試してみるのも面白いと思います。
これは、完璧な行動を最初から選ぶということではありません。相手の気持ちを察しようとしたとき、自分は何を感じたのか。その感覚をもとに、どんな言葉を選ぶのか。実際に行動したあと、場の雰囲気はどうだったのか。そうしたことを、自分なりに確かめていく。
行動心理学の知識を使うというと、何か特別な方法を身につけるように聞こえるかもしれません。でも、僕が動画で伝えたかったのは、心理学の研究結果を知ったうえで、自分の人生の中で試してみることの大切さです。
人見知りだからこそ、勢いだけで動くのではなく、自分が感じ取ったことを大切にしながら、一つの行動を選べる。慎重さは、動かない理由にもなりますが、周囲を見て、よりよい関わり方を考える力にもなります。
人の気持ちを察する力から、未来の行動を選ぶ
グループが良い結果を得るためには、個人の知能の高さだけでなく、メンバー同士の調和やコミュニケーションが関係している。人の気持ちを察する人がいることで、グループ全体がうまく機能することがある。
この話は、仕事やビジネスに限ったものではありません。学校など、何かのグループで活動するときにも考えられることです。
人見知りの人が育てたい能力は、無理に社交的になる力だけではないと思います。周りの人がどんな気持ちでいるのかを感じ取る力。そして、その感覚をもとに、自分はどう関わるのかを選ぶ力です。
人の気持ちを察することに疲れるときもあるかもしれません。けれど、その力を自分の弱さだけにしてしまわなくていい。相手を理解し、場との関わり方を考え、必要なときに小さく動くための力として見つめ直すことができます。
思っているだけでは、現実は変わりません。けれど、慎重に考えた人見知りの人だからこそ選べる行動もあります。
まずは、自分が感じ取っているものを否定しないこと。そのうえで、今日できる小さな関わり方を一つ選んでみること。人見知りにあると良い能力とは、誰よりも目立つための能力ではなく、人と人の間にあるものを感じ取り、自分の行動へつなげていく力なのだと思います。













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